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ゴッホが最後に見た風景

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パリ近郊の街、オーベール=シュル=オワーズに行ってきました。
Auvers-sur-Oise
ゴッホやセザンヌゆかりの街として有名で、 彼らの作品のモデルになった風景が今も点在しています。

パリ市内から、RERで約1時間ほど。
「ゴッホが死の間際に逗留していた街」として、
さぞかし観光地化されているかと思いきや、
街中、絵画のモデルになった場所にそれを示すプレートがある以外は、
ごく普通の落ち着いた街という印象でした。





もちろん、ゴッホが息を引き取った部屋が今も残されているラヴー亭や、
彼の主治医であり、絵のモデルにもなったガシェ医師の家など、
散策の目玉になる場所もありますし、
なにより、名画が描かれた場所に赴き、そこから景色を眺めると、
画家たちの創造性の源泉に触れているような、不思議な気分になります。




こうして実際の風景を見てみて思うのは、
画家たちが、目に映る風景を、かなり凝縮して画布に描いているということです。
ゴッホの教会も、セザンヌの首吊りの家も、
まるでそこだけ他とは違う重力が奥に向かって働いているかのような、
あるいは、建物が、狭い穴を無理やりこじ開けて出現してきたかのような、
そんな印象を受けます。
それはきっと、画家の風景に対する集中というか、没入の力強さでもあり、
また同時に、彼らに対する風景の存在感というか、切迫の力強さでもあるのでしょう。
彼らは、ただ事物が「ある」ということを、
まるで異世界の出現といったような、
途轍もない出来事として受け取っているかのようです。

街の静けさと、画家たちの作品の迫力には、
どこか謎めいた符号があるのかもしれません。
何の物音もしない夜明け前の街が、
いつもと異なる表情を垣間見せるように。

しばらく散策していると、
いつの間にか、一匹の黒い犬が、まるで道案内するように前を歩いていました。
その後、パリに戻るために駅に着いて気が付くと、姿が見えなくなってしまったのですが、
もしかしたら、その犬は、
僕たちを絵画の世界から現実の世界に連れ戻してくれたのかもしれません。